戻る  

VoIP基礎知識

VoIP基礎知識 序章  「はじめに」
VoIPについて簡単に説明しています。「アナログ」から「デジタル」、従量課金から定額課金とIT化の流れは変わってきています。
VoIP基礎知識 1章 「データと音声の統合ネットワーク」
「電話と交換機」、「電話の規格」電話機の接続インターフェース、電話の用語などについて説明します。
VoIP基礎知識 2章 「VoIP製品とLANdeVOICE」
市場に出ているVoIP製品の特徴や「LANdeVOICE」の特長、使用方法について説明します。
VoIP基礎知識 3章 「VoIP導入にあたっての課題」
VoIPを導入するにあたって、検討すべきことや準備しなければならないことを簡単に説明しています。

1章 「データと音声の統合ネットワーク」

 電話ネットワークとインターネットを代表とするIPネットワークの2つのネットワークが統合されようとしています。

 一般にVoIPのネットワーク側という表現を聞くと読者の皆さんはIPネットワークのことと理解するかもしれませんが電話工事事業者の方々にとっては電話回線側をさす場合があります。
このように思想の中心となる側が普段から扱う機器がPBXなどの電話機器なのかそれともルータなどのIPネットワーク機器なのかによって発想そのものが違うことがわかります。
VoIPシステムの導入を実現させるためにはこの両方のネットワークの知識が必要になります。
最近の技術者の方はIPネットワークに関する知識はある程度あると思われるがPBXや電話機に関する知識はなんとなくといった方が多いのではないでしょうか。
アナログ電話回線側の基本技術についてできるだけ業界用語を使わず技術背景や実際に有効な情報を交えて分かりやすく説明します。

 「電話と交換機」
電話機の歴史は古く日本でも実用されたのは明治時代であり その時代から改良され規格化され今日に至っている理由からアナログ電話回線の規格にはかなり古い時代のなごりが存在します。
現在の電話機は多機能になりCPUが搭載されていることもあるが一昔前の黒電話は当然のことながらCPUなど入っておらず呼び出し音も含めすべて受動部品で動作しています。
電話機と局(交換機)の間は2本の線で接続されており電話機が動作するエネルギーは局からの給電によって行われている。呼び出しの時には交流信号(例として数値を示すと日本の交換機では70Vrms 16Hz)が局より与えられこのエネルギーで電話機のベルが鳴ります。
その後電話システムは給電の極性を反転させたり通話中に短い極性反転を行うことにより電話機に課金信号を与え公衆電話のサービスを行いました。
その後FAX機が開発され従来の電話回線で絵が送れるようになり またモデム装置が開発されデータ信号が送れるようになりました。

 「電話の規格」
これらの新しいサービスを実現する為には古来からのアナログ回線の規格だけでは難しく互換性を保ちながら徐々に新しい規格が加えられ様々なシステムに使えるように改善されていきました。
新しい規格が世に出てくるうちの一部は世界中で共通の規格として広まったものもあるが日本独自に当時の電電公社が開発した規格も海外のメーカーが提案してデファクトスタンダードとして広まったものもあります。
近年追加された有名な機能としてはナンバーディスプレイがあります。
ナンバーディスプレイは着信電話側で電話を取る前に発信者の電話番号を知る為の機能ですがこの機能を実現する為の方式は世の中に複数あり日本はFSKモデムによるデータ転送方式で独自です。
また、海外で電話をされた経験がある方はお気づきでと思いますが、ダイヤルトーンやリングバックトーンについても世界共通仕様はありません。
日本ではダイヤルトーンは400Hz、リングバックトーンは400Hzに16Hzの変調した音で1秒ON、2秒OFFが一般的ですが、米国での一般的なダイヤルトーンは350Hz+440Hzという2つの周波数でできており、リングバックトーンは周波数もON/OFFのタイミング1秒3秒と日本とは異なります。
音色だけの問題であれば利用者が慣れれば問題ない場合もあるでしょうが、接続相手が機械であり自動認識する場合にはパラメータで調整するなりができないとシステムの運用に問題が発生したり制限が起きる場合があります。
このような場合何が原因か理解できていないと問題を解決することは難しいです。
パラメータがある場合には回避することができるでしょうし、なければ別の装置や回線の種類を使うことを検討すべきです。
最後に原因がわからず「相性の問題」といった理由で片付けられたりするのは少々納得がいきません。
ここではVoIPシステムを導入する上でよくある問題を以下に経験をもとに後述させていただきます。

 このような歴史と背景があるなかで今回は、日本でVoIPを使う為に必要な情報を提供します。アナログ電話回線を理解する上でまず主な構成機器について理解してもらう必要があります。

 「2線式アナログインターフェース」
電話ネットワークの基本は2線式アナログ回線である。まずはこの基本的な動作を理解することが必要です。
物理的には2本の銅線(2 wire metal copper)で接続されており この2本の上に直流信号と交流信号の組み合わせで様々な信号を伝え電話サービスを行っています。

 「ODインターフェース」
Out Band Dialling の略。色々な名称で呼ばれることがあります。TTC勧告では「PBXなどアナログインターフェース(SR方式)」(JJ-21.10)という名称で出ています。海外ではEar(耳)とMouth(口)の頭文字から「E&M」といった表現で呼ばれることもあります。
PBX同士を接続しようとした場合には前述した2線式アナログ回線では実現が難しい場合がありOD回線を使うことが多く、一般的には馴染みのない規格であるが半数以上のPBXやボタン電話主装置でオプションとしてODインターフェースを用意しているようです。
コネクタの形状まではTTC勧告に決められておらず各社各製品異なります。
VoIP装置に限ればCISCOの製品でRJ45のモジュラコネクタを使った製品がありこれにあわせたVoIP製品もいくつかあります。
モジュラコネクタの場合には専用工具と規格に合ったケーブルを用意する必要があることからLANdeVOICE OD01では端子台とモジュラコネクタの両方を用意しどちらを使ってもかまわないようになっています。
OD回線の場合には音声も上りと下りと別々に2本づつあり4W(フォーワイヤー)インターフェースと呼ばれます。

 アナログ電話回線では上りと下りが共通であった為に「2線4線変換回路」が必要となりインピーダンス不一致や反射による回り込みの影響やこれらを防ぐ為の減衰回路があり音声の劣化が発生してしまいます。
VoIPを使ってより回線品質のよい電話システムを構築するにはできるだけこの「2線4線変換回路」が入らないような設計にする方が好ましいです。
OD回線の場合には上りと下りが別なのでこの「2線4線変換回路」がないためにアナログインターフェースながら好ましインターフェースといえます。
これ以外に制御線が双方から1本づつたすきがけで渡されODインターフェースは接続しなければならない線が6〜7本と多い為に同一フロア内など比較的近い装置同士を接続するのに適しています。

 「その他のアナログインターフェース」
「TTC2M」
OD回線をデジタルにして時分割多重化した規格で主にPBXとTDMA装置を接続する為の規格。

 「LDインターフェース」
同一市内など2拠点間のPBXを直接2本の銅線で接続して内線通話を実現するような時に有効なインターフェース。
2線式で両方から同じ向き同じ電圧で給電を行い 相手を呼び出す側が給電を止めて直流回路を閉じる方式。2本の銅線でどちらからでも発信することが可能なインターフェース。
ODインターフェースよりマイナー。

 「PBX内線電話インターフェース」
さらにオフィスで使われている多機能電話機能を持つPBXもある。ただこのPBXについてはほとんどの場合主装置と端末は同一メーカでなくてはならず規格もメーカー独自であることが多い。通話路以外にデータを受け渡しする為の各社独自の専用信号ラインがある。多機能電話機の場合、このアナログ内線インターフェースにVoIP装置を設置することはないと理解していただいてよいでしょう。

 「給電側と端末側」
間違えて端末同士を接続してもエネルギー源がないのでオフフックしても何の変化もおきない。ところが給電側同士を接続するとお互いの加電圧の極性や電圧差によっては機器を壊す可能性があり絶対に局回線(NTT回線)にPBXの内線側など電圧を与えている回線を接続してはいけません。
よくVoIP製品のカタログにCOTインターフェースという文字があるがCOTとはCentral Office Trunkの略で日本語では局線トランクの意味。PBXのCOTインターフェースとは通常NTT回線と接続する側でVoIP側は給電する側となります。

 「オンフックとオフフック」
受話器を上げることをオフフック、下ろすことをオンフックという。オフフックすると直流回路が閉じ電流が流れ始めオンフックすると直流回路が開き直流電流が流れなくなり、この直流閉回路は一般的に擬似インダクタンス回路になっており直流インピーダンスは50〜300Ω、交流インピーダンスには影響がないようになっています。

 「選択信号」
オフフックしたあとにおすダイヤルのことである。大きく分けて2種類ある。1つはダイヤルパルス信号(DP信号)もう1つはプッシュボタン信号(PB信号)です。PB信号はDTMF(Dual Tone Multi Frequency)とも呼ばれます。
DP信号はONとOFFを繰り返しそのパルス数で表すもので10PPSと20PPSがあります。
このONとOFFのタイミングは勧告で許容範囲まで規定されておりこれは守らなければいけません。
ところがこのタイミングであるが日本と米国では異なり、日本でのメーク率は33%なのに対し米国では50%です。(受け側は通常どちらでも受けられるようである。)
通話中にダイヤルパルスを送っても交換機経由で単なる音として変換されてしまい相手端末までダイヤルパルスとして伝えることはできません。またダイヤルパルス信号は0〜9までのデジット信号しか送ることができないのに対しDTMF信号では0〜9以外も#や*さらに通常は使わないがあと4つのコードを発信することが可能です。
VoIPシステムでは電話番号を拡張する必要があることが多くその場合この#や*を使います。
よってこれらの理由よりVoIPの場合はDTMF信号を使うことが多くあります。

 「給電電圧と許容電流について」
-48VのDC電源がそのままだと当然のことながら危険です。実際には電流リミット回路や直流インピーダンスが直列に入っておりある一定以上の電流は流れないようになっていますが、もともとアナログ電話は想定される最悪条件でも通話ができるような規格になっています。
交換局と離れていて線路で消費する電力が多くてもアナログ端末が動作する為に必要なエネルギーを供給できる目的から2本の線間開放電圧は48Vで最大で120mAまで流れる規格になっています。ところが現在のアナログ電話機の内部は電子化が進みPCMCIAカード型のモデムなど機器がとても小さくなっているので、48Vで120mA流れると5W以上の電力となり局、線路、端末の合計でこの電力を消費することになります。PCMCIAカード型のような形状をしているモデムによっては電流が多く流れて壊れてしまう場合もあり電流を多く流せればよいというものでもありません。
これだけの電力を消費することは難しいと同時に無駄であることから電流リミットが入っているものが殆どでです。また数キロメートルも線路長がないような同一構内での使い方を前提とする機器の場合には電源電圧も24V程度に低く設計されたものも多くあり、電話機までの距離が長くても数百メートル程度であるボタン電話主装置は24V給電のものも多くあります。
アナログ電話回線では上りと下りが共通であった為に「2線4線変換回路」で変換しています。